断熱材コラム

誰でもできる断熱材性能の計算方法 断熱住宅の比較の仕方

Yahoo知恵袋や教えてGooで良く目にする投稿があります。

「現在住宅会社と商談中で、断熱材は○○の◇◇センチを勧められていますが、
これで本当に良いのでしょうか。オプションで××の□□センチにもできると言われましたが、どちらを選ぶのが良いのでしょうか」

いつも思うのですが、このような質問は誰に答えて欲しくて書いているのでしょうか。

素人が何となく書き込む掲示板サイトなので、
そもそも大した期待をせずに気軽に書き込んでいるのかもしれませんが、
それにしても、誰の答えを一番信用しようとしているのか不思議でなりません。

と言うのも、住宅会社の営業マンは当然自社の使っている断熱材を一番良い物だと勧めてきます。

家を建てた方の体験談では、それ以外の断熱材との比較は分かりません。

Aという断熱材とBという断熱材ではどちらが良いのか、という質問に
正しい答えをしてくれる立場の人間は誰なのか、実はいないのかもしれません。

そこで今回は、家を建てる方がご自身で断熱性能の客観的な比較をできる方法をご紹介します。

簡単に言ってしまえば方程式です。
断熱性能には一応方程式があり、断熱性能はその方程式で算出することができます。

断熱性能(熱抵抗値)=断熱材の厚さ÷その断熱材の熱伝導率

まさにこれが断熱性能の方程式です。

断熱材の厚さは、住宅会社に聞けば当然教えてもらいます。
種類も教えてもらいます。

問題は「熱伝導率」です。
「その断熱材の熱伝導率は…?」と聞けば当然住宅会社は把握しているので答えてはもらええますが、そもそも「熱伝導率」なんて専門的なキーワード、
質問するには若干抵抗がありますよね。

すごくマニアックなところまで突っ込むややこしい客だとも思われなくないので、
そんな細かいところまで聞く勇気はない。。

そんな方に朗報です。
熱伝導率は、インターネットにすべて出ています!

例えば、「当社はグラスウール16Kを100mm入れていますよ」と言われたら、
“グラスウール16K 熱伝導率”と検索してみて下さい。

ちなみにグラスウール16Kの熱伝導率は0.045なので、
グラスウール16Kを100mm入れたときの断熱性能は

0.1m ÷ 0.045 = 2.22  となります。

これは完全に余談ですが、建築業界の長さ単位というのは
なぜかmmとcmとmが入り交じっています。

基本的にはmmが基準となっているのですが、
今回のように断熱計算をするときはm単位になったりと
素人にはややこしいことこの上ないですね。。

しかも一般的なcmを一番使わないという、
なんだか不思議な業界です。

さて、話がそれましたが、
上の計算で、グラスウール16Kを100mm入れた場合の断熱性能は
2.22だということが分かりました。

「で?」という声が聞こえてきそうです。
確かに、断熱性能は2.22ですと言われても
全く何のことか分かりません。

ただ、今回はとりあえず、
Yahoo知恵袋などの投稿サイトで多い質問に沿っているので
それに沿って話を進めていきます。

先出の例の続きで
「オプションで高性能グラスウール16Kを100mmにも変更できると言われましたが、
どちらが良いでしょうか」
という投稿サイトへの質問があるとします。

グラスウールには一般的なものと“高性能グラスウール”と呼ばれるものがあるので、
住宅会社側はその2種類を扱っているということのなのでしょう。

では、“高性能グラスウール16K 熱貫流率”と検索してみます。
すると、高性能グラスウール16Kの熱貫流率は0.036だということが
インターネットに慣れている方ならすぐに見つけることができます。

オプションで断熱材を高性能グラスウール16K(100mm)にした場合の断熱能力は、

0.1m×0.036= 2.7

と計算ができます。

標準仕様が2.2だったので、オプションにすれば若干上がることが分かりました。

ここでまた「・・・で?」という突っ込みが聞こえてきます。

実は断熱材業界の中にいる者からしても、「・・・で?」という話です。
しかし、一般の方の投稿サイトを見ていると
「○○と××、どちらの断熱材が良いでしょうか」
という質問があまりにも多いことに驚きます。

最初に書いた通り、私はいつも投稿サイトを見て
「誰に答えてほしいんだろう?」という疑念とともに
「何を知りたいんだろう」と疑問に思ってしまいます。

上で計算した“断熱能力”は、専門用語で“熱貫流率”と呼びますが、
断熱材の熱貫流率だけで家の性能を測ることは不可能です。

断熱材の性能(熱貫流率)というのは、
住宅そのものの断熱性能を左右するほんの一部だということをご理解下さい。

住宅の断熱性能は「熱損失量」で決まる

では、実際に住宅の断熱性能はどのように数値化されているのかというと、
お日様の光がどれぐらい家に入るか、という日射取得率や、
年間冷暖房でどれぐらいのエネルギーを使うか、などが関係してきます。

簡単に言うと、建物の“外皮”からどれぐらい冷暖房の熱が逃げていっているか、
というのが、住宅性能の断熱性を測る基準となっています。

建物の“外皮”というのは、“表面”のことです。
外側一周の壁と、屋根と、床です。

ただ、地面に対面している床と、東西南北それぞれの壁と、直接陽が当たる屋根、
それぞれお日様に当たる割合(日射取得率)は異なり、
さらに壁には窓やドアといった“開口部”があります。

通常外皮の壁部分は断熱材が入っているので、
上で計算した断熱材の断熱性能が影響してきますが、
実は建物の外皮で一番熱が逃げやすいのは窓などの部分です。

下の図からも分かるように、家の中の熱の半分近くが
断熱材の入っていない窓部分から漏れ出しています。

これらのことを総合的に考えると、
断熱材だけをとって「どちらの断熱材が良いでしょう」と比較することは、
家そのものの快適性を比べることにはなりません。

それよりも重視すべきは、その会社が断熱住宅の施工に力を入れて取り組んでいるか否か、
という点です。

なんとなくグラスウールを標準仕様にし、
なんとなく高性能グラスウールをランクアップのオプションにしているような会社が仮にあったとしたら、窓などの開口部の断熱対策は疎かになっている可能性があります。

その場合、断熱材が標準のグラスウールだろうとオプションの高性能グラスウールだろうと、
そもそも部屋の熱の半分近くが断熱材の入っていない窓から逃げていくわけですから、
屋内の温熱環境の快適さはあまり違いがありません。

もしあなたが本当に断熱性能の高い快適な家に住みたいとお考えでしたら、
「どっちの断熱材が良いか」をどこかの誰かに聞くよりも
その2つの断熱材を提案する根拠を、住宅会社に突っ込んで聞いて下さい。

断熱材を変えることで、どれぐらい体感温度が違ってくるのか、
冷暖房のランニングコストがどれぐらい変わるのか、
その会社が建てた家の過去の実例を聞き出して下さい。

ここで重要なのは、設計上の数値ではなく、実例を聞くことです。

断熱材に限らず、家づくり全般において
設計図や設計数値を完璧に原寸で施工するには、非常に高度な技術が必要です。

どこまで忠実に設計通りに家を建てられるか、は
その家を建てる大工や職人の腕によって変わってきます。

いくら性能の高い断熱材を入れるように設計したとしても、
工事の段階でその断熱材を上手く入れられず隙間だらけになっていては
追加料金を払って断熱材をグレードアップした意味が全くありません。

なので、必ずあなたが依頼したいと思う会社の過去の実績をもとに、
断熱材の比較をすることが重要なのです。

もしくは、どうしても第三者に比較・助言をしてもらいたい場合は、
断熱材だけでなく、その家の設計図、東西南北は周辺の建物高さが分かる敷地図、
窓などの開口部の性能が全て分かる仕様書など、
ありとあらゆる条件をすべて用意して、
正式な断熱性能計算を依頼して下さい。

実際に長期優良住宅や認定低炭素住宅といった住宅認定制度では、
複雑な条件をすべて盛り込んだ計算方法が規定れています。

その規則に基づいて断熱性能を計算することは可能です。
(建築事務所などに依頼すると費用がかかる場合もあります)

ただし、先にも書いたようにそれはあくまで設計上の値にしかならないので、
あなたが住む家を建てるのであれば、
はやり実際にその会社で建てたご家庭の実績を知ることが
一番の近道かと思います。