三次で注文住宅を建てるなら、さくら建築の評判を聞いてみてからが良いですねこんにちは! 藤川正宗です。
昨日から日中の気温もあまり上がらず、一気に秋めくというか、冬が近づいていることを切々と感じさせてくれるようになってきました。
そうすると、注文住宅を設計するにあたって、暖房をどうするか、にも実感をともなって熱が入ってきますね。
いま、三良坂で建設中の高気密エコハウスでは、床下エアコンを使っての暖房を計画しています。非常に満足度が高いので、標準仕様として採用しています。
基本的なやり方は、私の設計の師匠・松尾和也先生の著書『ホントは安いエコハウス』にも図面が掲載されてますから、多くの工務店でもこれを見よう見まねでやっているところはたくさんあります。松尾先生もよくおっしゃられていますが、床下エアコンはポイントさえ外さなければ、比較的失敗しにくいことなので、その良さを実感されている方は全国に多いでしょうね。
師匠も床下エアコンについて書かれてますので、そちらもご覧になってください。
 ☞ 松尾設計室/床下エアコンについて
しかし掲載されている図面は床置エアコンでして、かなり古いやり方になっています。今は壁掛けエアコンをもっと細かくチューニングした設計方法をされています。
ということで、今日は床下エアコンで失敗しない設計方法をいくつか書いていきたいと思います。ちなみにすべて、師匠の松尾和也先生から直接伝授された秘伝のテクです(笑)

床下エアコンで失敗する事例

まずは、床下エアコンをとりあえずやってみると失敗してしまう事例というのをあげていきましょう。この方が話がわかりやすいです。

床下に温風をしっかり送ってくれなくて寒い

エアコンから出る温風は床下に送られているようにイメージするのですが、エアコンの周りからモヤモヤとあがってくる逆流現象というのがあります。
せっかく作られた温風が床下にしっかり送られなければ家全体を暖めることができませんし、すぐに返ってきた温風がセンサーを反応させてしまって、エアコンの運転が止まってしまいます。すると、家全体では寒いのに、エアコンが勘違いして働いてくれないことになってしまいます。

エアコンの容量が足りなくて寒い

家全体を暖めるのに必要な「暖房負荷」というのがあるんですが、それに対してエアコンの容量が足りていないと、いくらガンガン運転させても全然暖かくならない、ということがあります。
100棟くらいの実践をしてみてからの「これくらいの容量かなぁ」というのと、まったくのあてずっぽうで「20畳用でいいかなぁ」と決めるのとではまったく違います。そりゃそうですよね(笑)
もしかしたら、その山勘が当たることもあるかもしれませんが、外れたら悲惨ですよね。容量の大きいものに買い替えればいいでしょうが、その費用も、取り外したエアコンも、もったいないですね。

エアコンの給気量が足りなくて能力を発揮しない

エアコンというのは、室外機から空気を吸い込み、室内機から吹き出す、という物ではありません。。。というか、私、学生のころまでそんな勘違いをしていました(笑) ただしくは、壁掛けエアコンの場合、室内機の上から吸い込み、暖めたり冷ましたりしてから、下から吹き出します。
エアコンの仕組みとして、床下エアコンを設置した場合に部屋の空間から吸い込み、コンクリ基礎の床下空間に吹き出すのですから、吹き出すのと同量の空気をエアコンに戻さなくてはいけません。
よくある失敗として、床下エアコンを隠すために造作カウンターや造作テレビボードに組み込んだりしますが、ルーバーの隙間が小さかったり、そもそも仕込んだ箱としての空間が狭くて空気が通りにくい、ということがあったりします。
私も造作家具に組み込むようにしていますが、エアコンの上部にある吸込み口の面積以上の空気の通り道を確保するようにしますし、前面はルーバーではなく網戸にしています。これだとフィルターまでに埃などを止めてくれますし、断面積を減らさずにすみます。

基礎の立ち上がりのせいで温風が全体にまわらない

特殊な建物でない限り、基礎というのは、結構、立ち上がりが多く、入り組んでいます。そうすると、空気というのは素直な流れでしか動いてくれないので、人間の勝手な「ここをこう通って、ここまで行ってくれないかなー」という思い通りには、なかなかいかないものです。
基礎図面を見ていただくと、かなり入り組んでたり、ぐるりと回り込まないといけなかったり、行き止まりになっていたり、という基礎の配置だと、床下エアコンの温風が家全体に行き渡ることはない、という失敗例になってしまいます。
私だと、耐力壁の下だけを基礎の立ち上がりとするように許容応力度計算をしたり、素直に空気が流れるような立ち上がりの配置にしたり、通気タイプの基礎パッキン(ロングじゃないやつ)にしたり、行き止まりには床ガラリを配置してそこから空気が抜けるようにするなど、いろんな合わせ技で温風が家全体に行き渡るようにしています。

床下エアコンで失敗しないための対処法

というように、床下エアコンをやってみて失敗してしまう事例をいくつかあげてみました。
では、どうすれば失敗しないのだろうか、という対処法を順に説明していきます。

1.家全体の冷暖房負荷を計算します

当たり前のことですが、家ごとに間取りも性能も異なるので、個別に天井(屋根の場合も)、壁、床(基礎の場合も)の断熱性能と、開口部(窓とか玄関)の断熱性能、窓から太陽に熱がどれくらい入るかを計算して「冷暖房負荷」を割り出します。
そうすることで初めて、その家に必要な冷房容量、暖房容量がわかり、正しくエアコンを選定することができます。
もちろん、冷房負荷と、暖房負荷は異なります。ちなみに一台のエアコンでも冷房能力と暖房能力って違うんです。ですから、それぞれをカバーする強い方向でエアコンを選定することになります。

2.1階から2階への空気の流れを設計します

こんなこと書いたらなんですが、床下エアコンで1階は簡単に暖まります。でもその暖かい空気をどうやって2階の各部屋に持って行くか、というのが大切なポイントになってきます。
吹き抜けや階段の下に床ガラリを配置して、暖かい空気がそこを通るようにしますし、2階のドアには垂れ壁をつくらないようにするか、ドアの上はルーバーなどの欄間を設けるかする必要があります。暖かい空気は天井を這うようにして広がっていきます。各部屋から排気する換気扇が空気を吸うことで、暖気も引っ張られていきます。もしも垂れ壁があると、1番暖かい空気はそこで止められてしまい、すこし冷めた空気がその部屋に入っていきます。そうならたいめに、私は床から天井までのハイドアを標準にしています。これだと上下の隙間から空気が動くんですね。

3.1階の床ガラリの配置と数を設計します

床ガラリの数は大事です。すくないのはダメです。開口するのが面倒ですから、ついついすくなめにしたくなるお気持ちもわかりますが、床下エアコンが吹き出した空気をしっかり部屋空間に届けなくてはならないので、最低限の合計面積、というのがあります。800c㎡あればいいと云われてまして、よくある樹脂製の床ガラリ(ダブル)が140c㎡ですから7個設置すればOKということです。多くなるのは問題ありません。とはいえ、変にショートサーキットを起こしてしまわないようにお気を付けください。

4.エアコンの設置方法を設計します

暖かさを感じたいリビングに設置することが多いように思います。もちろんそれもいいのですが、私は、服を脱いで1番寒くなりがちな脱衣室に床下エアコンを設置するようにしています。
そして、床下エアコンへの給気を妨げることのないように、しっかりと空間を確保、空気の通り道を狭くしない、ということが大切ですし、コンクリ基礎の立ち上がりのところでも書きましたが、素直に暖気が流れるように、基礎は位置をすることと、床ガラリの配置も大切なポイントになってきます。
忘れてはいけないのは、床下エアコンは、床のライン(FL)を境目に、上半分が頭を出し、下半分は沈み込んでいます。そうすると、床材とエアコンの間には隙間ができてしまいます。そこで、その隙間を埋めることが、おそらく最も大事なことになっています。
私はシール付スポンジを駆使して、隙間をしっかりと止めるようにしています。

5.気流などを考えて基礎の設計をします

床下エアコンをやろうと思ったら、基礎の立ち上がりをどうするかくらいは自然と考えてみるものなので、こういう失敗をすることは少ないと思いますが、それでもエアコンを設置する場所、向き、家の隅々まで温風が行き渡るかどうか、という視点での設計をが抜けていると
あと、松尾先生からお聞きしたトンデモ失敗事例として、基礎断熱をしていない、というのがあるそうです。もちろん、松尾先生がやったんではなく、とある工務店さんが聞いてやってみた失敗事例です。
床下エアコンをするなら、基礎断熱は必須です。床断熱は意味がないどころかフローリング材自体がほんのり暖かくなる、という素晴らしい利点をなくしてしまうことになります。そして、外気にさらされて冷えた基礎コンクリートが温風の熱を取り去ってしまって、いつまでも床下空間が暖まらないことになってしまいます。

まとめ

ふりかえってみると、当たり前のことを書き連ねてしまったなぁとも思いますが、床下エアコンは多くの家に広まってもらいたいので、あえて基本的なことも含めて解説してみました。
なので、ここに書かれていることを網羅するように設計されると、床下エアコンも失敗せずに稼働できるようにまとめたつもりです。
もしもわからないことがありましたら、メールや電話などでお問い合わせください。できるだけわかりやすくお答えしたいと思っています。
もちろん、断熱性能がしっかりしてることが大前提、という面もあるので、こだわりの家づくりなんかも参考にしていただければと思います。